アサマダキ




完全に呑みすぎたわ・・・。
乱菊は痛む頭を抑えながら十番隊の詰所へと歩いていた。
空は濃い群青色が水で薄めるようにように淡い色へと変化しつつある。
まだ辺りは暗いのだが明かりがなくても問題ない程度に周りの状況は把握できた。
夏の夜明けは早い。
朝が来たと思っていても仕事が始まるまでにはまだ時間がある。

執務室で仮眠でもとろうかしら。
そのほうが仕事に行くときに楽だろう、と小さな欠伸をひとつかくと乱菊は自分の部屋とは逆にある執務室へと
向かった。
執務室のすぐ傍を通ったときまだ部屋の中に明かりがついていることに気が付いた。

隊長ったら消し忘れたのね。
あの部屋を使う者など自分の他には一人しかいない。
昨日は悪いとは思いながらも先約のあった自分のほうが先に執務室を出た。
珍しいとは思いながらも然程気にせず乱菊はそのまま執務室へと歩いた。

「おう、随分と早ぇな。」
扉を開けようと手をかけたところで中から声がしたことに乱菊は驚いた。
開けてみると中には不機嫌そうにソファーに座る日番谷の姿があった。
「隊長・・・。何やってるんですか?こんな時間まで。」
「お前こそ何をやってたんだこんな時間まで。」
眼を大きく見開きながら訊ねる乱菊を睨みつけながら日番谷は厭味を含めた質問を返した。
どうやら日番谷は今朝早く来たのではなく昨日から帰っていないみたいだった。
そのうえ自分に対して怒っているように見える。
思い当たるふしのある乱菊が諦めたような顔をした。
「昨日は修平や恋次と呑みに行くっていってありましたよね?」
「あぁ・・・。だがもう少し慎みをもったほうがいいんじゃねぇのか。」
「どういう意味ですか?」
「それぐらい自分で考えろ。」
挑発的な態度をとる乱菊が気に障ったらしく日番谷は切り捨てるような言葉を吐き捨てた。
それが子供じみたやきもちであることぐらい日番谷は充分わかっている。
それでも気に入らないものは気に入らない。
つい言葉に悪意がこもってしまう。
・・・とわいえ自分の言い方も悪かった。
日番谷が横目で乱菊を見ると乱菊は黙ったまま真っ直ぐ日番谷を見つめていた。

「なんだ?」
日番谷は乱菊の視線に答えるように首から上の向きを変えた。
「・・・いえ。」
「言いたいことがあるならはっきり言え。」
「・・・申し訳ありませんでした。」
「謝れと言った覚えはない。」
「・・・。」依然として自分から眼を逸らしたままの乱菊に日番谷は小さく舌打ちをした。
そしてそれはどうやら乱菊の耳にも届いたらしく乱菊の表情が変わった。
「隊長こそ言いたいことがあるならはっきり言ってください。」
「なんだと?」
「あたしがほかの男と飲みに行ったのが気に入らないなそう言えばいいじゃないですか!」
「誰がそんなことを言った!」
「違うんですか!」
声を荒げながら一歩ずつ自分に近づいてくる乱菊に日番谷もいつの間にかソファーから立ち上がり大声で言葉を
返した。
「莫迦なこといってんじゃねぇよ!第一お前がそういって欲しいだけじゃねぇのか!」
「何言ってるんですか!冗談じゃない!」
「そうだろうが!わざとらしく俺に断ってから行くなんてよぉ!」
まだ人気のない隊舎に2人分の怒鳴り声が響いた。
言いたいことを全て言い切ると2人は無言で睨みあった。
先に根負けしたのは乱菊のほうだった。
乱菊は大きく息を吐くと傍にあったソファーへ乱暴に腰を下ろした。
「言って欲しいってわかってるなら言って下さいよ。」
諦めたように笑う乱菊にもう一度軽く舌打ちをすると日番谷も乱菊の隣に座った。
「お前の思い通りのことはしたくない。」
「それでもたまには独占欲ってものを見せて欲しいんですけど?」
「見せただろうが。」
「へっ?」
たった今見せただろう、と言うと日番谷は面白くなさそうに乱菊に背を向けた。

後ろから楽しそうな乱菊の笑い声が聞こえる。
乱菊にそのつもりはなかっただろうがうまいこと手の上で転がされたような気がしてなんともいえない。
日番谷は複雑な顔をしている。
「心配しなくてもあたしは隊長だけの物ですから。」
からかうように乱菊は後ろから日番谷を抱きしめた。
「・・・暑い。離れろ。」
「またぁ、素直じゃないんだから。」
「なっ!」
勢いよく振り返ろうとする日番谷を乱菊はソファーに押し倒した。
「・・・おい、なんのつもりだ?」「少し寝ませんか?あたし昨日寝てないんですよ。」
「もう朝だぞ?」
「まだ始業まで時間があります。」
よほど眠かったのだろう。
最後は聞き取れない程の呟きになっていた。
日番谷は自分を抱きしめたまま幸せそうな寝息をたてる乱菊にあきれたように溜め息をついた。
こんな状況で男の俺が寝れると思うのか?
日番谷は心の中で悪態をつくと窓の外を眺めた。
空は白んできてもう充分な明るさになっている。
朝は来たが仕事が始めるまでにはまだ時間がある。
あと数時間。
果たして自分の理性がもつのだろうか?
・・・もたせるしかないだろう。
日番谷は全くやってくる気配のない眠気を誘うように目蓋を閉じた。









コメント:
乱菊さんがはしゃいだりムキになったり出来るのは日番谷君の前でだけだと思います!そんな無邪気な乱菊さんも
麗しい乱菊さんも大好きなのでいろんな乱菊さんを見てこの暑い夏を乗り越えたいです。






ブラウザバックでお戻り下さい。






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送