メノスグランデとの決戦で八番隊と十番隊は見事に大勝利を収めた。しかし、その後、
十番隊副隊長・松本乱菊が行方不明になる。元十二番隊隊長・浦原喜助の元で保護されて
いるとの知らせを受け、十番隊隊長・日番谷冬獅郎、八番隊隊長・京楽春水そして副隊長・
伊勢七緒が浦原商店へと急ぐ。
「こりゃあ、京楽さん。お早いお着きで。」
「やあ、喜助さん。お久しぶり。」
「ご無沙汰ですねぇ。おや、伊勢さん。さっきは、どうも。」
「お久しぶりです。浦原隊長。」
七緒が軽く頭を下げる。
「―――とすると、こちらさんが、十番隊の―――」
「日番谷だ。―――松本が世話になった。感謝する。」
「いえいえ。なんてことはないですよ。―――そうですか。あなたが――。アッシが浦原
喜助です。以後お見知りおきを。」
「―――。」
七緒が横目で日番谷を見る。
(きっげんわる――。)




花火




「乱菊殿。冷えた麦湯はいかがですかな?」
「ありがとうございます。頂きます。テッサイ様。」
乱菊がテッサイの差し出した良く冷えた麦茶を受け取る。蒲団の上に起き上がってはみた
ものの、頭痛は益々ひどくなる。
「―――本当に、何から何までお世話になり、感謝の言葉もございません。家人が着き次第、
祖父に申し伝えて、早速お礼に伺いますわ。」
「い、いいえ。そんなお気遣いをなさる必要はありません。」
テッサイの額から冷や汗が、ぶつぶつと湧き出る。
「それにしても、わたくしの迎えの者は遅いですね。何をしているのでしょう。表に出て、
様子を―――」
乱菊が蒲団の上に手を突いて立ち上がろうとすると、
「らっ、乱菊どの!! 貴殿はまだ、かっ、体が本調子ではないのですから、ご無理をなさって
はいけません!! 寝ていなくてはいけませんぞ!! 代わりにウルルを使いに出しますから、
心配なさるな。」
テッサイが両手を振り回して乱菊の行く手を阻む。
「そうですか――。」
残念そうに乱菊が腰をおろす。その様子を見やりながら、障子を開け、縁側に出たテッサイが
大きな溜息をついた。
(まさか、あなたは百五十年前に既に亡くなってるので、家に帰ってもあなたの知ってる人は
いないんですよ、とは言えんしなぁ―――)
グランドフィッシャーとの死闘後、霊力が極端に弱っている乱菊は喜助の作った義骸に入り、
霊力が回復するのを待っている。しかし、死神である事を忘れてしまっている本人はその事を
知らない。自分はいまだ生きていて、自分を待っている親兄弟が心配していると思っている。
いつまで隠しおおせるかと暗い気持ちになりながら、テッサイが腕時計を見る。
(もう七時か――。京楽隊長達はもう着いてる頃だな。店長は冬番谷隊長にあのことを話した
のだろうか。今日は八月八日―――。あと五日か――。)



「松本の現世の記憶が戻った?」
「―――へぇ。」
喜助が喉の奥で返事をする。眼をむいている冬番谷を心配そうな目で見ながら、七緒は
考える。
(やはり、あの侍は、乱菊さんと現世で何かの繋がりがあった人だったんだ。でも、
どうして、ああまで日番谷隊長と似てるんだろう。冬番谷隊長と乱菊さんは前世で何かの
因縁があったんだろうか。)
喜助が、帽子の鍔(つば)の割れ目から、日番谷を凝視する。
「ねぇ、日番谷サン。あと五日で八月十三日。この日、何の日か知ってます?」
「尸魂界の門が現世に開く日だ。」
間髪入れずに冬番谷が答えた。
「ご名答♪知ってんだったら話が早い。ご存知のとおり、年に二回、流魂街の魂は現世に
里帰りすることを許されます。一度目は年の暮れから翌年の頭にかけて。そして二度目は――」
日番谷が、そんな当たり前の事を何を今更、という顔をする。
「八月十三日から十六日までの四日間――現世で「盆」と呼ばれる時期です。」
祭りが始まったようだ。表が騒々しい。揚花火(あげはなび)の音がする。
「この時期、霊力の高い魂を求めて、虚の動きも活発になる―――ってことは、死神だったら
誰でも知ってることっスね。問題は――今の乱菊さんは死神であって死神でない。つまり現世に
里帰りした整(プラス)と同じなんっスよ。大物の虚たちがすぐにその霊力の高さに気づく
でしょう。放っておけば、虚の餌食でさぁ。」
「だから何だ。話がなげぇ。」
日番谷が、ただでさえ目つきの悪い目で、喜助をぎろりと睨みつける。
「俺は、松本を現世に長居させとく気はねぇ。虚の餌食になんかならねぇよ。」
チューリップ・ハットの鍔を、親指と人指し指で持ち上げ、喜助がぼそっと切り出した。
「―――ねぇ。日番谷サン。考えようによっちゃあ、乱菊サンを解放してやった方が彼女のため
かもしれませんよ。」
「解放?」
日番谷が怪訝な(けげんな)面持ちになる。
「そう。彼女の魂を「解放」するんです。」
「言ってる意味がわからねぇ。」
少し間をおいて喜助が言った。
「乱菊さんを魂葬するんス。」
「!!!」
京楽、七緒、そして日番谷が凍りつく。
「そうしたら、彼女は再び流魂街へ整として行ける。死神としてではなく―ね。わかります?
アッシの言ってる意味?」
喜助の問いに京楽が答える。
「――つまり、乱菊ちゃんは再び人間に生まれ変われるって事だね。」
「!!!」
日番谷は衝撃のあまり物が言えない。
「そうっス。」



テッサイが、これからどうしたものかと考えあぐねていると、突然、頭上で鉄砲音が聞こえた。
空を見上げると、七色の花が空に咲いている。ギン太が大声を出して駆け寄ってきた。
「うぉーい!!テッサイさん!ねーちゃん!花火だ!!花火だ!!」
打ち揚げ音とギン太の声を聞きつけた乱菊が、障子を開けて縁側に出てくる。
「花火?」
「ああ、そういえば、今日は大川の花火大会でしたな。あそこの花火は盛大だ。」
テッサイが目を細めて遠くを見る。菊先紅蜂(きくさきべにばち)、千輪(せんりん)、八重芯、
そして銀冠(ぎんかむろ)。紅、青、黄色の花々が、空というキャンパス一面に描かれていく。
一般に、紫のような中間色は火薬の調合が難しく、中々美しい色が出ない。だが、よほど花火師の
腕が良いのだろう。紫牡丹が夜空で鮮やかに咲き誇っている。遠くで、たまやー!かぎやー!と
掛け声がする。
「おい!! ねーちゃん!! 土手に行こうぜ! あそこの方がよく見えるぞ!」
「ダメだよ―――。ギン太くん。お姉さんは、まだ気分が悪いんだから―。」
「いちいち、うるセ―んだよ!! オメ―はよ!」
ギン太が、ウルルの前髪を両手で引っ張る。テッサイが、ギン太の後ろ襟をむんずとつかむやいなや、
垣根の向こうまで放り投げた。
「うわあああああああああ―――――――――――!!!!!」
「まだ、外出は無理ですぞ。乱菊殿。特に大川の堤防付近は、ものすごい数の見物客で一杯です。
あんなところに行ったら、また失神してしまいますぞ!!」
なんとか外出を阻止しようと、テッサイが乱菊に顔を近づける。
「―――そ、そうですわね――。」
テッサイの迫力に押されながらも、乱菊ははっとした。
(大川の堤防?)
頭になんだか靄(もや)がかかる。
(大川――。堤防――。何だろう。この嫌な気持ち。胸がむかむかする。私は、何か――何か大事な
事を忘れている―――。でも、何を?)
乱菊の様子に気づいたテッサイが顔を曇らせる。
「何か――?」
「いえ――。あの、わたくし気分がすぐれませんので、少し休ませて頂きます。」
乱菊が暗に人払いを乞う。
(ひとりになって静かに考えれば、何か思い出せそうな気がする―――)




「アッシは乱菊サンが、現世で何をしたのか知りませんが、彼女は流魂街でも最貧層クラスの地区に
いた。あのまま、あそこに居ても、おそらく人間に生まれる確率は低かったでしょう。でも、今は
事情が違う。」
日番谷の驚愕した表情を、気にも求めないように喜助が続ける。
「彼女の――護廷十三隊の副隊長としての、長年の功労は大きく評価される。ラッキーなことに、
この四日間は恩赦の時期でもあるんっス。死神の特別リストに載ってる魂は人間に生まれ変わる。」
「―――――――」
日番谷が呆然と(ぼうぜんと)した表情で喜助を見る。
「つまり、十三日までに乱菊さんを魂葬すれば―――彼女はほぼ間違いなく、上位リストに追加される。
そして恩赦により、新しい生命として現世に――」
「ふざけるなっ!!!!!」
日番谷が、これ以上黙ってられるかとばかりに喜助を制す。
「でも、ねぇ。日番谷さん。彼女が死神だって事を忘れてるってことは、忘れたいような事があった
からじゃないんですかい?」
「――――。」
市丸との、あの一戦が脳裏に浮かぶ。何も言い返せない。
「彼女は、現世に帰った方が幸せなんじゃないんですかい?」
とうとう切れた日番谷が、右足で思いっきり茶卓を蹴り上げる。
「おい!黙って聞いてりゃ、いい気になりやがって!」
「日番谷隊長!」
止めに入ろうとする七緒を退け、声をかぎりに叫ぶ。
「勝手なこと、ほざいてんじゃねぇぞ!! ひとの―――ひとの女を何だと思ってる!!あいつは俺が
連れて帰る!邪魔立てするなら、斬る!!」
はぁはぁと肩で息する日番谷を、京楽たち三人が呆然と(ぼうぜんと)見つめる。七緒の頬が徐々に
赤くなる。
「――――――――――」
「――――――――――」
思いがけない沈黙に、はっと我に返る日番谷。
(や、やべぇ―――。)
顔が、ぼんっと赤くなる。
「聞いた?七緒ちゃん。今の?」
京楽が目をきらきらさせる
「―――――聞きました。隊長。『ひとのおんな』ですって。」
喜助がぽそりとつぶやく。
「いまどき、言わないっスよねぇ―――うわぁ――――恥ずかしぃ―――」
「ち―――――ちっ、ちっ、違う!!誤解だ!!誤解!!よ、よその隊の事に口出しすんじゃねぇって
意味で言ったんだ!!」
あせる日番谷を全く無視して、話を続ける京楽と七緒。
「隊長、知ってました?ふたりの関係。」
「ううん。冬獅郎君ってば、ほら。恥・ず・か・し・が・り・屋・さんっ♪だから、ボクはぜーんぜん
気がつかなかったよ!あ――っはっは――♪」
「――――てめぇら―――そんなに氷漬けになりてぇか――」



(あれは――、あれは、わたくしだわ。一緒にいる方は誰―――)

――乱菊どの。いよいよ、明日から基礎工事に入りますので、しばらくお伺いできません。―――
――いよいよ冬獅郎様の夢が叶うのですね。――
――ええ。大川に堤防を作りその水を引けば、農民が旱魃(かんばつ)に悩まされることも最早あります
まい。私のように洪水で肉親を失う者もいなくなる。―
――冬獅郎様――。桃二郎様のことは本当にお気の毒でした。あんなに仲睦まじい御兄弟でしたのに―――
――いいえ。この堤防が完成すれば、多くの人命が守れます。あいつもあの世で喜んでいることでしょう。――
――冬獅郎様――
――乱菊どの。――この堤防工事が完了した暁には―――
――なんですの?冬獅郎様。――
――あなたを頂きたいと、お父様にご挨拶に伺ってもよろしいですか?――
――冬獅郎様。――

(冬獅郎様――。そうだわ。冬獅郎様よ。お茶会でお会いした――。あの涼やかなまなざしの――。)

――お嬢様。おお、いやだ。今晩もまた嵐になりそうですよ。乱菊様。日番谷様からお文が参っておりますよ。――
――ありがとう。――
――おさみしいですわね。こんなに長い間留守にされて。――
――仕方がないわ。お役目ですもの。――
――そうですわね。それにしても、日番谷様はこの長雨で工事が遅れてお忙しいでしょうに、まめにお便りを
くださって。本当に実(じつ)のある殿方ですわ。そのおかげで、私もお嬢様のこんなに幸せそうなお顔を見れて、
本当に嬉しゅうございます。わたくしは本当に神仏に感謝しておりますよ。――
――わたくしも、市丸様がわたくしをお見捨てになってから、こんな日が再びやって来るとは思ってもみません
でした。――
――お嬢様。――
――幸せすぎて怖いくらいよ。――

(そうだわ。冬獅郎様はわたくしの背の君――。なんだろう?この得体のしれない恐怖感は。ああ、胸が苦しい。
そうだわ。冬獅郎様はどこにいるの?)

――お嬢様。早馬がきましたわ。なんでしょう。――
――お父様へのお使者でしょう。――
――お嬢様!!お嬢様!!――
――なんです。騒々しい。何があったの?――
――いま、今しがた、日番谷殿の副官の方から早馬が来て――
――え?冬獅郎様の?――――お、大川の堤防が決壊した、と。――
――!!――
――何?それで日番谷様はどちらにいらっしゃるのじゃ。お嬢様、どうなさいました。顔が真っ青ですよ。――
――それが――
――ええい、はっきり申さぬか!乱菊様。ああ、そんなお顔をされないで。――
――う、運悪く、日番谷殿はちょうど見回りで大川に来られていた時らしく、難を逃れた人夫が、日番谷様が
濁流に飲み込まれるところをはっきりと見た、と。―――
―――嘘です!!――
――乱菊様。――
――嘘です!!あの方が私を、ひとり残していくわけがありません!あの方は、約束されました。堤防工事が完成
したら、必ず戻ると。――
――乱菊様。――
――わたくしは、わたくしは、信じません!――
――らんぎく、、さま――

(息が―――できない。そうだわ。わたしは、わたしは――、あの後、冬獅郎様の後を追って――)

――旦那様!!旦那様!!乱菊様がいらっしゃいません!!乱菊様!!らんぎくさまぁあ!!――――

(いやだ――もう見たくない。これ以上―――。)

――あれ?なんだい?あそこ、あの橋の上にいる。ありゃあ、いなくなった千玄々斎(せんのげんげんさい)様の
ところのお嬢さんじゃ――
――おい!危ないぞ!この雨で水かさが増してんだ!何やってんだ!お−い!てぇへんだ!!女が身を投げたぞ――!!
お−い!!誰か!舟を出せ!――

(もう――もう――ひとり残されるのはたくさん――。冬獅郎様――。)





「おい、松本、おい、松本、松本!!」
床の間に横たわっている乱菊。涙が頬をつたう。
「大丈夫か?おまえ、うなされてたぞ。」
日番谷が心配そうに枕元から覗き込む。乱菊が信じられない様子で、日番谷の顔を見る。
「どうした?気分が悪いのか?」
「ご無事だったのですね――冬獅郎様―――。」
「え?」
「―――よかった。わたくしは――もうどうしてよいか――」
乱菊が日番谷の胸に手を添えて左肩にもたれかかる。
「なっ――――――(!!!)」
「―――あなた様が、亡くなられたとうかがって、私は、胸がつぶれる思いが致しました。何度、夢であってと
祈ったことか。」
「――お、おい――。松本――。」
「わたくしは、信じておりました。冬獅郎様。」
乱菊の真っ直ぐな瞳が自分を射る。何が起こっているのかわからない。
「あなた様が、わたくしを、ひとり残していってしまうわけがありません。」
乱菊がきっぱりと言った。
「―――おまえ――。」
段々と事の次第がわかってきたが、女を知らない日番谷は、とにかく気恥ずかしくて、こういう時、どんな気の
利いたせりふを吐けばよいのか検討もつかない。躊躇していると、乱菊が益々強くしがみついてきた。
(やべェ――。どうしたらいいんだ――。オレは――。)
子供のように泣きじゃくる乱菊を引き離すこともできず、所在なしに宙に浮いていた両手を、彼女の肩にそっと
置いた。
「―――冬獅郎様――。」
「――――」
「ずっと、ずっとお待ち申し上げておりました。」
乱菊が日番谷の喉元に頬をよせ、甘えるように囁いた。乱菊の温もりが伝わってくる。自分でもびっくりする
ほど自然に、乱菊の肩に置いてあった手を背中に回した。
「乱菊は――冬獅郎様―――。」
乱菊と日番谷の視線が交わる。蜜色の瞳が、日番谷にあの螢夜を思い出させる。
「――ずっと―――冬獅郎様が恋しゅうございました。」
喉から振り絞るような声で、乱菊が囁く。日番谷は耳たぶまで赤くなったが、無意識に両手に力を込め、乱菊を
強く固く抱き締めた。何だか無性にいとおしい。乱菊の口から吐息がもれる。亜麻色の髪を撫でながら、日番谷が
凛とした声で言った。
「わかってる。俺は―。俺も―――おまえが消えて――さみしかった。絶対に、おまえを置いてどこにも行かない。
だから、おまえも俺のそばから離れるな。」
日番谷の体の中で、乱菊が微かに頷いた(うなずいた)。遠くで蝉が鳴いている。暁が近い。




「いやあ、アッシとしちゃあ、魂葬もアリかなって思ったんスけどね。」
からから笑う喜助を、日番谷が横目でぎろりと睨む。少し離れたところで、乱菊と七緒の笑い声がする。
「まあ―――。しょうがないっスね。決定権は隊長さんにあるんスから。幸い、鬼道で、ここにいる間の記憶は
消せたし、その代わりに死神だってことも思い出してくれたしね。万事、メデタシ、メデタシ、ってとこっスかねぇ。」
「そうなるな。」
ふんと鼻をならす日番谷の後ろから、乱菊がやってきた。
「隊長。帰還の準備ができました。」
「おっ、おうっ!」
日番谷は、乱菊と視線を合わせずに、わざと反対の方向へ離れていく。喜助の鬼道で、昨晩の記憶をすっかりなくした
乱菊は、普段と全く変わりがない。一方、日番谷はいつもの調子が全く出ない。乱菊の顔すら見れない。
「ねえ、冬獅郎君。」
京楽が耳元で囁く。
「なんだ?気色わりぃな。」
「君――もしかして、このボクでも言わないような、あんな恥ずかしいセリフ吐いといて、まだ乱菊ちゃんに、
告ってないわけ?」
「ば――ぶ―――、ぶわっかやろう!!何ぬかしてやがる!!」
七緒が横から口を出す。
「そのようですよ。隊長。」
「ふーん。だからあの時、キュッ!だけで、ブチュッ!がなかったんだ。」
「て、てめぇ―――――何で―――それを―――――」
日番谷が青ざめる。
「案外おぼこいんですね。日番谷サンって。」
七緒が眼鏡の奥から、にやりと笑う。
「お、おぼこ――――いっ? 伊勢!てめぇ!キャラに合わねぇセリフ吐くんじゃねえ!!」
「隊長っ!何してるんですか!!とっとと帰りますよ!!」
乱菊が、尸魂界へ続く扉の前から呼んでいる。
「早くしないと、四十八時間たっちゃうじゃないですか!もう!ほら、早く!!京楽隊長も、伊勢も!ぐずぐずしてる
と置いてきますよ!開錠!」
乱菊の斬魄刀から光が放たれ、障子に見立てた尸魂界への扉が、ゆっくりと開いていく。
「間に合わなかったら、冷やし汁粉、隊長のおごりですからね。」
「バカヤロォ!元はと言えば、てめぇのせいだ!」
門に向かって走りながら、昨夜のひとときを思い返す。



(記憶がねぇって反則だよな―――――――――)




つくつく法師の声がする。













ブラウザバックでお戻り下さい。






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